私たちは、日々膨大なモノや情報を目にしながら生きています。
コンビニに行けばお弁当やドリンク、アルコール類、日用品や漫画、雑誌とたくさんの商品が陳列されていますね。
もし、それらが何の分類も整理もされていなかったらどうでしょうか。
例えば、おにぎりの横にチョコレートが置かれていて、更にその横にはライターが置かれていたら・・・
明らかに違和感を感じますよね。
これについて武蔵野美術大学造形学部の非常勤講師、筒井亜湖さんは次のように述べています。
世界にはスズメやカラス、ダチョウなど、様々な種類のトリが存在しますが、私たちはそれらのトリをまったく別の存在として認識するのではなく、「トリ」という1つの概念としてとらえることができます。このように、私たちには日々の経験や物事のなかで共通した性質を持つもの同士を1つにまとめて、それにラベルをつけて認識する「カテゴリ化」という認知機能が備わっています。
引用:三浦佳世・河原純一郎編著(2019). 美しさと魅力の心理 ミネルヴァ書房
全てのモノや情報を、それぞれ個別に認識していては、脳の認知機能が追いつかないので、ある程度のまとまりを持たせた上で認識しているんですね。
また、筒井さんはWhitfield & Slatter(1979)が提唱した「典型性選好理論」についても述べています。
典型性選好理論とは、ヒトは、その対象が属するカテゴリの特徴を多く共有しているものほど選好する、というものです。
つまり、何らかのカテゴリに分類しやすいものが好かれやすいとも言えますね。
Webサイトにも同様の考え方が適用できます。
Webサイトにも「カテゴリ」という概念は存在しますね。
それにはLATCH法を用いた分類を行っていくのが一般的です。
前回、「SEOに強いWebサイト構造の設計と作り方 – サイトマップ編」でWebサイト設計の考え方の一つにLATCH法を取り入れる、ということについて触れましたが、今回は、もう少しLATCH法について掘り下げて紹介したいと思います。
LATCH法とは
上でも述べた様に、ヒトは様々なモノや情報に対してラベル付けやカテゴリ化といった組織化を行って物事を認識しますが、情報の組織化をするにあたって、Information Architect(インフォメーションアーキテクト)という考え方があります。
Information Architectの基本的な考え方は、「複雑なコンテンツ・情報・モノをシンプルに整理し、状況や目的に応じてわかりやすくまとめる」というものです。
これはWebサイトの設計において非常に重要な考え方で、サイト規模やその目的に関わらず、意識する必要があります。
分かりやすくラベル付けとグループ化された情報は検索性と閲覧性が上がり、その情報が何であるか、どこにあるのかがスピーディに理解できるようになり、バラバラだった情報が意味を持つようになってきます。
Information Architectの父、Richard Wurman氏は、情報整理の組織化の方法は「Location(位置による組織化)」「Alphabet(アルファベットによる組織化)」「Time(時間による組織化)」「Category(分野による組織化)」「Hierarhy(階層による組織化)」であると定義しています。
これらの頭文字を取って「LATCH法」と呼んでいます。
LATCH法
Location(位置による組織化) | 地理的・物理的な位置に従って整理する方法 例:地図、施設案内 |
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Alphabet(アルファベットによる組織化) | アルファベットや五十音など、文字による順序で整理する方法 例:辞書、用語集、電話帳 |
Time(時間による組織化) | 年表やカレンダーなど時間軸によって整理する方法 例:年表、カレンダー、日記、タイムテーブル |
Category(分野による組織化) | ジャンルやカテゴリーなどによって整理する方法 例:商品陳列、動物園、図書分類 |
Hierarchy(階層による組織化) | 大きさや値段、優先度や頻度などの情報の程度によって整理する方法 例:ランキング、身長順 |
WebサイトにおけるLATCH法の活用
実際のWebサイトではLATCH法はどの様に活用されているでしょうか。
それでは、いくつかのサイトを元に、見ていきましょう。
Location(位置による組織化)
場所や位置関係に従って分類する方法です。
複数の店舗がある場合の店舗一覧や、出張サービスの対応エリア、地域情報メディア等での地域別カテゴリといった形で活用されます。
住まいや勤務地など、ユーザの活動範囲と提供コンテンツをマッチングさせることがこの分類の主な目的となります。
店舗で分類
愛知県の店舗一覧(1ページ目) | ニトリ | 店舗・営業時間
「ニトリ」の店舗一覧。店舗が大量にあるため、各都道府県ごとにページが作られています。
部屋タイプで分類
同じくニトリのオンラインショップ。利用が想定される場所(部屋)毎に分類がされ、「リビング収納が欲しい」といったニーズを抱えたユーザが目的の商品を即座に見つけられるようになっています。
Alphabet(アルファベットによる組織化)
アルファベットによる組織化は、ユーザーが既に目的の物の名称を認知している場合に有効です。
例えば、好きなブランドの服をECサイトで探す場合、「Tシャツ」や「赤」といった分類で探すと、目的の物を見つけるのにとても時間がかかってしまいます。
ブランド名が明確にわかっているなら、アルファベット順または五十音順で探す形が最も素早く対象を見つけられる方法です。書店やCDショップなどでもジャンルによる分類と併用する形で五十音分類がされていますね。
ブランド名で分類
Brand List ジュエリーコネクション Jewelry Connection
様々なジュエリーブランドを取り扱うオンラインショップのブランドリスト。
大量にある取り扱いブランドをアルファベット順に並べることで目的のブランドを見つけやすくしてあります。
Time(時間による組織化)
時間による組織化は、時系列に沿ったコンテンツやアーカイブとしての機能を持ったコンテンツに最適な分類方法です。
ブログの月別アーカイブが代表的な例です。
新着情報で年別に分類
新着情報:2020|エナジール株式会社/Enazealオフィシャルサイト
コーポレートサイトのお知らせ・新着情報を年別に分類がされています。
活動経歴を年別に分類
ロックバンドの活動経歴を年表の様に年別に分類がされており、いつどの様な活動がされたのかを時系列に沿って確認が出来るようになっています。
Category(分野による組織化)
分野による組織化は、組織化を行う側が組織化の分類方法を意図的に操作出来るのが最大の特徴です。
例えば、下の例で参考に出しているようにインテリアショップのカテゴリとして「ベッド」や「ソファ」といった様に、製品カテゴリーで分類することも出来れば、「20代向け」「一人暮らし向け」「北欧風」「シンプルモダン」「和風」「お買い得商品」といった様に、様々な分類をすることが出来るので、非常に汎用性があるのが特徴です。
商品カテゴリで分類
ニトリのオンラインショップ。様々な商品を商品ジャンルに応じてカテゴリ分けをし、更に細分化したカテゴリで階層構造を作ることで、検索性を向上させています。
コーディネイト別に分類
Hierarchy(階層による組織化)
主にランキングや価格帯別分類など、数量や重要度による分類する方法で。
例えば新聞の1面は最も重要となるニュースが掲載されていますが、これは情報の重要度によって分類された結果です。
Webサイトでは、「人気記事」「売れ筋商品」といった形で使われています。
価格帯で分類
【ブラッディマリー 公式販売店】 ブラッディマリー (Bloody Mary)| Bloody Mary
ドメスティックジュエリーブランド「Bloody Mary」の公式オンラインショップ。豊富な商品を価格帯別にも探せるようになっており、予算に応じた検索を可能にしています。ECサイトでは価格帯別の分類は非常に重要なファクターとなります。
Webサイトの設計時にはLATCH法を意識しよう
Webサイトは通常様々な種類のコンテンツが混在しています。
ただ闇雲に並べただけでは、検索性も可読性も悪いものになってしまうので、それには何らかの方法を用いて適切にWebサイトコンテンツを分類・整理していく必要があります。
その分類法のひとつとして、LATCH法の活用はとても有効です。
ぜひ、Webサイトの設計をする際にLATCH方を意識して使いこなせるようになりましょう。